海外リーディング企業のカスタマージャーニーマッピング実例

BtoB購買プロセスの複雑化とジャーニーマッピングの重要性 

海外BtoB商談はもはや「展示会で名刺交換→営業訪問→受注」の一辺倒ではなくなりました。

オンライン検索、ホワイトペーパーのダウンロード、ウェビナー参加、比較サイトでの比較、製品トライアル…と、見込み客がたどるタッチポイントは爆発的に増加。これを従来のPDCAサイクルだけで追いかけようとすると、いつ、どのコンテンツが刺さったのか、どのタイミングで離脱が起きているのかを正確に把握できず、効果的な施策改善が難しくなってしまいます。 

従来のPDCAだけでは追いきれないタッチポイントの増加 

従来のPDCAは「計画→実行→評価→改善」のシンプルな流れですが、オンラインとオフラインをまたいだ無数の接点を網羅するには設計が追いつきません。
たとえば、ウェブ広告からホワイトペーパーに遷移した後、しばらく何もアクションを起こさず、後日SNS投稿を見て再度訪問したケースをPDCAでつなげるのは困難です。この結果、「どのチャネルに投資すべきか」「どのコンテンツを強化すべきか」が不明瞭になり、無駄な予算やリソースを費やしてしまうリスクが高まります。 

ジャーニーマップで見える化すべき理由 

カスタマージャーニーマップは、顧客が製品購入に至るまでのすべての過程と接点を視覚的に整理するツールです。
このマップを作成すれば、各フェーズで顧客が何を考え、どのチャネルで情報を探し、どのコンテンツに反応しているかが一目瞭然になります。

その結果、投資効果の低いタッチポイントを削ぎ落とし、最重要の接点にリソースを集中させることで、効率的にコンバージョン率を高める施策設計が可能になります。さらにチーム全体で同じ顧客像を共有できるため、マーケティングとセールスの連携もスムーズに進むというメリットがあります。 

購買プロセス各フェーズと必須タッチポイント 

認知(Awareness)フェーズ 

顧客が初めて自社ソリューションの存在を知る段階では、オンライン広告やSEOによる検索結果での露出が欠かせません。
業界レポートやホワイトペーパーを配布し、専門的な知見を無料で提供することで、「この企業なら信頼できる」という第一印象を残すことが重要です。見込み顧客はまだ課題感の段階にいますから、課題解決のヒントや市場動向を示すコンテンツを投下し、興味の「種まき」を行いましょう。 

興味・検討(Consideration)フェーズ 

初期接触が成功すると、次はより深い理解を求めるステージへ進みます。
ここではウェビナーやオンラインセミナーといった双方向コンテンツが効果的です。専門家による解説やQ&Aを通じて、自社ソリューションの優位性を伝え、同時に比較表や導入事例のダウンロードリンクを用意することで、具体的な検討材料を見込み顧客に提供します。
これにより、「自分の業務に本当に役立つか」を体感してもらえるようになります。 

意思決定(Decision)フェーズ 

顧客が本格的に導入を判断するタイミングでは、製品デモや無料トライアルの申し込みが「最後の押しボタン」となります。
ここでは、オンラインで即時に手続きを完了できるフォームのほか、ROIシミュレーターを設置し、投資対効果を定量的に示すことが信頼を後押しします。デモ映像やインタラクティブな試算ツールを併用することで、購買のハードルをぐっと下げることが可能です。 

購入後/維持(Retention)フェーズ 

受注後は、むしろここからが本当のスタートです。導入オンボーディング用の動画チュートリアルやマニュアルを整備し、スムーズな立ち上げを支援しましょう。また、定期的なQ&Aセッションやユーザーコミュニティの運営を通じて、顧客がつまずくポイントを先回りし、継続的に価値を提供し続けることがリピートやアップセルを実現する鍵となります。 

推奨・ロイヤルティ(Advocacy/Loyalty)フェーズ 

購買後フェーズの先には、満足した顧客自身が「推奨者」へとステップアップする段階があります。ここでは、既存顧客が自社ソリューションを他社に紹介したり、ケーススタディやレビューを共有したりすることで、新たな見込み顧客の認知を後押しします。顧客が能動的に貴社を推奨する構造が生まれ、再び最初の「認知(Awareness)」フェーズへと好循環をつくり出します。 

リーディング企業の具体例 

HubSpotのジャーニーマッピング実例

HubSpotも、自社のCMS・マーケティングオートメーションを軸にしたジャーニーマッピングを実践しています。

認知フェーズでは SEO に最適化されたブログ記事やリサーチレポートを公開し、検索流入から見込み客を獲得。興味・検討フェーズでは無料ツール(例:Website Grader)やホワイトペーパーのダウンロードを CTA で誘導し、その行動データをもとにスコアリングを行います。さらに、リードの関心度に応じたメールナーチャリングやセミナー招待を自動化することで、営業接点に移行するまでの体験を一貫して設計しています。

Salesforceのジャーニーマッピング実例 

Salesforceは、自社が提供するCRMプラットフォームをフル活用し、顧客の旅路をきめ細やかに設計しています。たとえば認知フェーズでは、毎年発行する「State of Marketing」を公式サイトで無料公開し、メールキャンペーンや検索広告と連動させてリードを獲得しています。これにより、見込み顧客は業界最新動向を得つつ自然にSalesforceの存在を認識します。 

興味・検討フェーズでは、学習プラットフォーム「Trailhead」を活用。顧客は自分のペースで製品機能を習得できるうえ、PardotやMarketing Cloudと連携することで、学習成果が自社CRMに自動集約され、スコアリングや次回アプローチの指標に利用可能です。また、Sales Enablement機能を通じて営業チームはテンプレート化されたデモ資料やプレゼン資料を即座に呼び出せるため、一貫したブランド体験を提供できます。 

意思決定期に入ると、公式サイト上の「CRM Benefit Calculator」で具体的なROI試算を行い、数値として投資対効果を示すことで、経営層の納得度を高めます。購買後はSuccess Cloudチームがオンボーディングと定期ヘルスチェックをリードし、顧客満足度や定着率を可視化。マーケティング部門とセールス部門は単一のダッシュボードを共有し、常にリアルタイムでリード状況を把握できるため、タイムリーなフォローアップが可能です。 

SAPのマイクロコンテンツ戦略イメージ 

SAPでは、膨大なERP機能を短時間で理解してもらうために、短尺のマイクロコンテンツ活用が広がっています。公式コミュニティサイトでは、製品チュートリアルや機能紹介の数分動画が数多く公開されており、ユーザーは気になる機能をクリック一つで再生できます。 

さらに、多くの企業が動画視聴データをMAツールやチャットボット連携のトリガーとして設定し、興味を示したユーザーには自動的にホワイトペーパーやウェビナー招待を送信。こうした仕組みは公式に詳細が公開されていないものの、短尺動画+ナーチャリングの組み合わせによってMQL創出効率が飛躍的に高まる事例が増えています。 

SAP自身も、このマイクロコンテンツ戦略を通じて顧客エンゲージメントを強化し、従来よりも短いサイクルで商談化につなげる仕組みを整えていると考えられます。 

Siemensのハイブリッドタッチポイント設計イメージ 

Siemensは、オンラインとオフラインをシームレスに結びつけたハイブリッド体験で知られています。公式の「Industry Online Support」ポータルでは、技術ドキュメント、チュートリアル動画、サポートチケット管理を一元化し、顧客はいつでも必要な情報にアクセス可能です。 

一方、展示会ではVRやARを活用したデジタルシミュレーションを提供し、来場者は実機を操作するかのような没入体験を味わえます。具体的な導線は非公開ながら、先進企業では展示会のQRコードからオンラインデモに切り替え、後日さらに深い商談につなげる取り組みが増えているようです。 

これらを組み合わせることで、Siemensは顧客の疑問をリアルタイムに解消すると同時に、長期的なサポート体制を強固にし、ブランドロイヤルティを高める仕組みを確立しています。 

各フェーズで効く「最適コンテンツ」ガイド 

フェーズ 推奨コンテンツ 説明 
認知 (Awareness) 業界トレンドレポートインフォグラフィック 複雑な市場データを一目で理解できるビジュアル資料。SNSやメール誘導と組み合わせ、ブランド認知とリード獲得の「種まき」に最適。 
検討 (Consideration) 比較ホワイトペーパーQ&A集 競合比較や価格比較をまとめたホワイトペーパーと、疑問を即解消するQ&Aドキュメントをセット提供。見込み度の高いリードを効率的に絞り込み、信頼感を醸成。 
意思決定 (Decision) インタラクティブデモROIシミュレーター ウェブ上で製品を操作できるデモ体験と、自社データを使った投資対効果計算ツール。導入イメージの明確化と数値による説得力で、最終判断を後押し。 
購入後〜維持 (Retention) オンボーディング動画エキスパートウェビナー 24時間いつでも視聴できるチュートリアル動画と、最新活用事例を共有するウェビナーで利用定着を支援。顧客満足度とアップセル機会の最大化に貢献。 
推奨・ロイヤルティ (Advocacy) リファラルプログラム顧客事例インタビュー 紹介成功時の特典付与による口コミ拡大と、導入企業のリアルな声を発信するインタビューで第三者信頼性を高める。アンバサダーを巻き込むことで、新規リードの獲得サイクルを自動化。 

BtoBの海外マーケティングで成果を出すために 

これまで、BtoBの海外マーケティングで成果を出すためのカスタマージャーニーマッピングの考え方と、SalesforceやSAP、Siemensなどリーディング企業の実例をご紹介してきました。最初の一歩は、社内のマーケティング・セールス・カスタマーサクセスメンバーを集めて、顧客がどんな経路をたどって製品にたどり着くのかを“見える化”することです。まずは認知から推奨までの各フェーズを書き出し、現状のタッチポイントと用意しているコンテンツを並べてみてください。足りない部分、重複している部分が自然と浮かび上がり、何を優先的に改善すべきかが見えてくるはずです。 

UDXアセスメントのご案内 

もし「どこから手をつければ最短で成果が出るのか」をより具体的に知りたい場合は、ぜひUDXのアセスメントをご活用ください。 

この無料アセスメントでは、 

  1. 自社と競合の流入状況比較を行い、どのチャネルが伸びしろを持っているかを明確化 
  2. 獲得キーワード&広告出稿の傾向抽出で、競合がどこに投資しどのようなキーワードで成果を出しているかを可視化 
  3. 自社コンテンツとSNSのパフォーマンス分析を通じて、ユーザーの反応が高いコンテンツや投稿スタイルを特定 

…という3つの視点から、今後のWebサイト強化に向けた最適な戦略ロードマップをご提案します。 
海外BtoBマーケティングを今すぐ一気に加速させたい方は、ぜひお気軽にお申し込みください!